このコーナー「やきものの常識は疑いやきものを信じよ!」は、近代以降、雰囲気や夢想あるいは「トンネルに幽霊がいる」といった類いの、どちらかといえば善良な部類のアミニズム、または単なる迂闊にて語られ続け今や常識と化した、やきものにまつわる如何にも尤もらしい話をいろいろと疑ってみた結果、「それでもやきものは美しい!!」と宗教裁判をも恐れず言い切った先人に敬意を表したものです。
したがって、いかなる反論があろうとも私は知りません。姉妹コーナー(なぜこの手の話は例えば都市提携などでも、兄弟ではなく姉妹なのでしょう)である「やきものの常識は疑え!」(いつも命令調ですみません)では、雲霞のごとく押し寄せる反論を期待していたのですが、現在まで好評はいただいても反論は全くいただけず、とても寂しかったので今回は知りません。
また、本稿は乳幼児への読み聞かせにはさほどの実害はないと思われますが、その結果どのような大人になったとしても当方ではなく「やきものの精」のせいです。その場合、絵本のように添付の画像を見せて下さい。その小さい方が画像に興味を持たれるようでしたら、お連れ下されば実際に現物に触れていただきたいと思います。
尚、この欄に登場するやきものはすべて、売り物ではありません。
また最後に、本稿は単にいろいろなやきものをご覧いただく目的によるものであり、これといって他意はまったくありません。閲覧の結果、著しい嫌悪感を覚えられたとしても「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」式にやきものまで嫌いにならないでいただけることを、やきもの共々心より祈っております。

10. 丹波赤どべ片口小壺

 

 

10. 丹波赤どべ片口小壺  17世紀 高さ9.7cm胴径10.0cm

 

引き続いて丹波片口小壺です。

こちらは江戸初期の「赤どべ」です。「どべ」とはヌタ状の土のことです。

赤どべは素地の上に、素地土より耐火度の低い別の土を細かくヌタ状にしたものを、掛けたり塗ったりした丹波立杭特有のやきものです。備前の「伊部手」と同じく、もとは漏れ止めを目的にしたものですが、たいへん独特で美しい赤に発色したものが少なからず現存していて、丹波のやきものの中でもとりわけ珍重されるアイテムとなっています。

とりわけ、このように小さな片口壺は珍しいものです。

資料として見るべき箇所は、赤どべが「掛け外し」になっていることにより、施釉(施どべか・・)と素地土の様子とがあからさまに確認できることです。これも案外少ないのです。

この小壺はお歯黒壺として使われていたようで、入手した当時、内側が酸化第二鉄と化したお歯黒でびっしり覆われていました。

すこし腰は引けましたが、構わず酒を入れてみました。

鉄分補給にちょうどよいわ、などと構えていると、あっと言う間に盃の内は40年物の高麗人参酒色に染まり、さらにはついに赤どべと化しました。これではさすがに「鉄の肝臓」になってしまいそうなので、かなり怯みました。そこで、これまでの例にしたがって金ブラシで慎重に除去を試みた結果、腱鞘炎になりました。

そのかわり未だ鉄の肝臓にも心臓にもなっていないようです。

呑みすぎると酔っぱらうし、怖い目に逢うと一目散に撤退するからです。

いま考えてみれば、「鉄の肝臓」や「鉄の心臓」でも良かったかもしれません。

 

もしかすると、昔のひとに較べ、今のひとは「鉄分」が少々足らないのかもしれません。

いまいちど「指輪」を、「お歯黒」に戻してみればいかがでしょうか。