新 学 Atarashi Manabu
略歴
1973年
大阪に生まれる
1995年
関西大学文学部卒業
1999年
父、新歓嗣に師事
2002年
穴窯築窯
同年初個展
2003年
以後各地にて個展、グループ展開催
2008年
二基目となる穴窯築窯
2011年
新窯築窯
2013年
第六回現代茶陶展受賞

「伊賀」と「信楽」とはどう違うのか、と聞かれることがよくあります。
明確に記されたものや、答えとなる発言が少ないからでしょう。
この峠を隔てて近隣する両産地は、どちらも中世以前には類似した壺甕を生産していましたが、その区分が明確になるのは桃山期以降です。
現在私達が「伊賀と信楽」と呼ぶときには、「信楽」は室町中期に作られていた壺とその流れを汲むもの、そして「伊賀」は桃山期の茶陶として生まれた織部様式の造形をもつ花入や水指などを祖とするものを指します(タヌキと土鍋はまた別枠です)。
つまり、作られた目的による区分なのです。端的に言いますと「信楽」は産地、「伊賀」は作風を指していることが多いわけです。
「新学さんの伊賀」は、造形に鎬や面取りを駆使し、それらが螺旋状に構成されていて一見すると古典的要素を前面に押し出すことをあえて控えているようにも見えます。
ですがこの面構成の手法こそが、桃山時代に忽然と現われ、それまでのやきものには見られなかった美濃茶陶をはじめとする織部様式の造形スタイルなのです。
そういうわけで新さんの造形は、その原点に忠実にしてそれをより推し進めたものと言えます。
新さんの伊賀の際立った特質としてぜひ注目いただきたいのは、灰被りやビードロ、焦げなどで織りなす窯変の透明感のある美しさです。窯変が層をなして重なってゆくと、重厚さは増すものの、通常濁ります。重厚さと透明感を兼ね備わった窯変と、先述の鎬を駆使した同じく重厚な造形とが融合する氏の作品を見ていると、爽やかな軽やかさが感じられてくるのは不思議なことです。
どうぞ手に取って、それをご確認いただければ幸甚です。

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