今年最初の展覧会が、柳下季器さんの当廊における初個展でもありました。

その折りに、世にほとんど見かける機会のない黒楽タイプの徳利をお願いしました。

「長次郎の黒茶碗の口辺から、そのまま肩と頸が伸びて徳利に化けたイメージ」というのが依頼内容です。

柳下さんが長次郎形のものに「今焼」という名称を使用するのは、楽の初代という位置付けの長次郎は当時未だ「楽」ではなく、当時このタイプの茶碗が「今焼(イマヤキ)」と呼ばれていたことによります。田中宗慶が印を拝領して以降「楽」という商標となり、その後現代まで続く楽家の製品が「楽」であり、現代は一般にこの手のやきものを黒、赤、白を含め「楽」と俗称されていますが、柳下さんの使うこの名称が最適だと思います。

柳下さんの黒はバリエーションが多く、黒の失透、光沢の他、一見初期長次郎の赤を思わせるものから、紫や茶さびが入ったような色と質感のものまでいろいろあります。

従来、黒楽タイプでの徳利は製法や堅牢さから酒器には向かなかったものですが、今回はそういったことにも配慮がなされ、茶寂びが入ったかの如く侘びた肌も味わい深く、酒が楽しめる徳利となっています。

どうぞ稀少な珍器といえる黒楽徳利を、日々の酒の伴として貴方のコレクションにどうぞ!