清水 剛 Shimizu Takeshi
略歴
1975
兵庫県丹波立杭に生まれる
1999
京都市立芸術大学卒業
陶芸家・今井政之、眞正氏に師事

清水剛さんは刻紋銀彩のシリ-ズで知られる作者です。丹波立杭の陶家に生を受け、京都市立芸大を卒業後今井政之氏の門弟として修練を重ねました。

 

氏の刻紋銀彩は、精緻な線と面と配色とで構成された斬新さが表出する作品なのですが、どこか有機的であるのは、その発想の源が室町期丹波陶の「猫掻(ねこがき)」と呼ばれる線文にあるからかも知れません。

 

さて本展は、その氏の代表作である刻紋銀彩シリーズ、ではなく全作品をここ数年氏が強い思い入れをもって取り組んでいる、塩釉を使った登窯焼成による「塩窯(えんよう)」シリ-ズで構成いたしました。清水剛さんにとって初の試みであるそうです。

 

氏は丹波の古典について語ることのできる作者ですが、この塩窯シリ-ズのもととなる塩釉は、昭和に入ってから「民芸」という既念とともに立杭に入って来た技法で清水家にも由縁があり、清水剛さんにとってはそこから、丹波のやきものに釉薬が導入された桃山へ江戸初期へと遡って取り組んでゆくための足がかりでもあるそうです。

 

刻紋銀彩での緻密で斬新な造形に対し、塩窯ではやきものとしての力強さと美しいブルー、そして登窯による窯変が強調され、対を成しています。

 

一見すると塩窯シリ-ズの方が古典に寄っていますが、これらの作品が生まれる動機が斬新であり、この作者が生来備え持つ繊細な緻密さの内在を気配として纒うのを見て取れます。

 

是非お手に取ってご確認いただければ、と存じ上げます。

2017年7月 ギャラリーラボ