やきものの仕上がりには、ここを外せば他は無いという「点」のものと、「線」または「面」ともいえる、多くの落としどころを持ったものとがあります。
備前のやきものは古来より後者の典型で、「最良のあがり」というものが寛容ともいえるほどに豊富なヴァリエーションをもつやきものです。
これは説明すれば長くなるので割愛しますが、「土の特質」とひとことでも言えるものです。

今回、森本さんと企てていたのは、数あるベスト（言葉として変ですが）のなかから一種類のみに絞って発表するという、いわば「B面無しのシングルカット」のような展示でした。
それは、土肌の活きたもののなかから特定のひとつを選んだもので、森本さんの備前には「つよいあがり」と「やわらかなあがり」の持ち札がともに有り、最近の氏が土肌だけで勝負できるものを志す傾向にあったからです。

さて本展の内容ですが、もとの企みは本来「線」で表現できる備前の仕上がりをあえて「点」に限定したものでしたので、さすがの「森本良信」といえども実現にはそれなりの長い時間が必要なようなので（いずれやります）、今回はもう少々幅をもたせた「短めの線」といった内容になっています。

と、いうことですが、やはり森本良信氏ならではの作品群のなかから土肌の活きたものを選別した展観となりそうです。
皆様にはぜひとも会場にてご確認頂きたく存じ上げます。