新宮 さやか Singu sayaka
略歴
1979年
大阪生まれ
2001年
大阪芸術大学芸術学部工芸科陶芸コース卒業
2012年
アジアトップギャラリー・ホテルアートフェア(香港)
ART KYOTO 2012(京都)
第七回パラミタ陶芸大賞展(三重)
2013年
ART OSAKA2013(大阪)
LA CERAMIQUE JAPONAISE(パリ)
2014年
彩鳳堂画廊(東京)
美の予感(髙島屋)
2017年
壺中居 個展

どのような分野においても、初心より九割方くらいまでは比較的すんなり行くとしても、「残り0.1秒の壁」というものがあり、そこからその差を縮めるには膨大な努力のみならず、特殊能力を必要とします。
新宮さやかさんの作品のように、精巧で手の込んでいてそれぞれのパーツが収まるべきところへ収まった完成度の高い作品の場合、そこから一歩踏み出すことはなかなかの難易度かと察せられます。その行程の一例としては「手数を減らす」という方法があります。「手数を減らす」という作業がひと行程増えるわけです。増やすより減らすほうが、難易度は格段に上がります。「手を抜く」という技は、実は相当な工夫と熱量、そして経験と才能とを要するF難度の“超絶技巧”なのです。

新宮さんは「天性の制作者魂」を感じられることにおいて、現代の作者さんの中でも卓越した稀少な存在でありますが、氏によると「いつも6割までは完成するが、残る4割は試行錯誤する(謙虚だと思えます)」ことがこれまでの常であったそうで「今回はとくにその4割の部分に重点を置いた」というのが本展の作品群です。
新宮さんによると「省略がうまくいった」そうで、確かに輪郭がより明瞭になりバランスが安定感を増していても一見手数を減らしているようには見えませんが、確かに「言われてみれば」増減の組み替えが絶妙に成されていることに気付き感心させられます。

今回の作品では、とくに冊子掲載の「片口」などに顕著な特徴ですが、鳥を連想させる造形と蝶のような装飾表現が、片口という造形と相俟ってその世界観をよく際立たせています。氏がもとより持つ技術と技巧が、より自然物の領域に近付いたように見てとれます。
新宮作品のもうひとつの特質として、「やきもの」としてとても強靭な材質感を備えます。「よいやきもの」であるということです。
これはとても大切なことなのです。

ギャラリーラボ 企画