全世界のやきものの歴史のなかで、素材の性質が最も直接現れるものが唐津です。
土、釉とも混然一体となってやきものと化したかに見える近世初頭の唐津陶は、触れる度にやきものそのものの良さを再認識させてくれるものです。
たとえば焼締陶は無釉で土が露見しているようであっても「土の焼け肌」のほうが全面に出てくるので、却って素材本来の性質が紛れるものです。近世美濃陶の場合は、その真価が造形設計の演出力と釉調にあります。唐津以外の施釉陶では、装飾としての「素地上の釉」の面白さが主体です。
近年、彼の地では古唐津を素直に目指したものが増え、素材の特定も進み、姿かたちもそれらしく仕上げたものを多く見ることができますが、実際手に触れたときの押し並べて薄っぺらい違和感はどうにもならないのが現況です(器壁の厚みや重量などは関係ありません)。手取りの触感はやきものの良し悪しを大きく分かつ要諦で、これが駄目だと使う以前に触るのがまず億劫になるものです。これはとても大切なことです。
素材、成形、焼成ともにとりわけシンプルな唐津陶なのですが、では唐津元来の素材を使用して当時と同じように焼けば同等のものになるかといえば、そうはならないことがほとんどであることを現代製唐津で確認できてしまうのはなぜなのでしょうか。
前置きが長くなりましたが結論を述べますと、現代の唐津陶で丸田宗彦さんの作品が、手に触れたとき「本当の唐津」を感じ取ることのできる唯一の唐津である、ということを断言します。さらに語弊を顧みずに言えば、現代においてやきもの本来の良さを体現できる非常に数少ない作者だと思っています。もちろん、瞬時に氏のものと分かる独自性は相変わらず健在で、加えて近作には品位と古格が増してきたように感じられます。本展の作品をぜひ手に取ってご覧になってみて下さい。
選挙の街頭演説のようになってすみません。