高橋陽氏が現在最も思い入れの深いやきものは青瓷だそうです。なかでも南宋の汝窯をひとつの指針にしていると伺いました。
南宋の官窯を目指す青瓷作家は大勢いますが、そのほとんどが良く言えば「きれい」、別の言い方をすれば「味気なく、長く見ているぶんにはつまらない」作品にとどまっているようです。
これは酒に似ていて、大吟醸酒(特に「アル添」のもの)は実にきれいでよく出来ていはいますが、すぐ呑み飽きるものです。純米、純吟のよく出来たものは「雑味」をうまく活かすことによって、呑み飽きしない「たいへん旨い」酒になります。
高橋氏の青瓷は現在試行錯誤中ながらも、越州窯の系譜を思わせる「良い雑味」のブレンドを感じる粉青青瓷です。私は呑むのであれば「きれい」な青瓷よりこちらを選びます。
因みに南宋佳品には、しっかりとこの「雑味」を感じます。現代の青瓷も人間も同じで、綺麗だけでは実につまらないものです。