小出尚永氏の作風は、師である原田拾六直系のものと、小出自身の体質由来の金属器を思わせる繊細で鋭利な作品との二系統に多別することができます。
この水指は典型的な「前者」で、一見すれば原田拾六か、と思えてしまうほど「真に迫った」作品です。
こういう言い回しを嫌う者も少なからず居ますが、小出氏はいつも「師の作風に惹かれてこの道に入ったのだから、その作風を意図して表出させる必要がある」ということを口にしています。
こうでなくてはなりません。本人に力量さえあれば、徹して修得した「型」からは放っておいても出るものです。
師の作風から意図して逃れ、それが「自分なり」であるという者の力量は、大体において低いものです。小出さんの姿勢を見習うべきである、と思います。
ともあれこの水指は,小出尚永の傑作にして現代備前の名作です。
ぜひご覧になってみて下さい。