扁壷とは「平らな面をもった壷」という意味です。
決して「偏」(かたより)などではなく、ましてや「変」(へん)でもありません。
この扁壷は李朝初期の粉青沙器扁壷のスタイルを採用しています。
さて、ここで描かれている絵に注目してみて下さい。
美濃産の織部徳利と絵唐津酒盃が描かれています。
今を遡ること四百年の慶長・元和年間、美濃と唐津は茶陶のシェアを占める二大勢力でした。
なので結果、そのデザインも互いの影響を受け与え、「美濃のような唐津」や「唐津のような美濃」もあるのです。
そして、美濃のルーツは中国ですが、唐津のルーツは李朝です。
すでにお気づきでしょうが、丸田氏はこの扁壷に、これら三つの要素を融合させています。
「市の瀬高麗神」の胎土でできた唐津焼の本体、李朝の姿、そして織部徳利の絵付けがとても瀟洒に合体しているので深い枇杷色や、いいところに石ハゼが現れているのも魅力で、手に納まりの良さとあいまって、確実に使って使って楽しめる徳利です。