今回の「やきもの通信」の目玉と言ってしまってもよい手付酒注ぎです。
この酒注ぎをみた時、あっ!これは皆様に隠して私が家で使うのだ、と一瞬邪意がよぎりましたが、公明正大をモットーとする当廊ではそれも許されず、残念ですがご紹介いたします。
なぜ私がこれを欲しいのかと申しますと、まずは全体の雰囲気です。
土だ焼きだ造形だという前に、やきものとして最も大切なのはこれです。
本当は、これが駄目だと、土も焼きも造形も注視する気が失せてしまうものです。
パッと見た瞬間おっ!と思う。これがいち大事なのです。
さて、この酒注ぎは「おおっ!」と思った後、部分を見てゆくと、まず蹄鉄や殷あたりの青磁器を思わせる取っ手、相輪のような蓋紐、鉄瓶のようでもあるが柔らかな弾力をもった胴部、他部に比べ細かく土が整えられた注口部など、細部に至るまでの造形的配慮に、小出尚永氏の良さが存分に集約されています。
そしてそれらが合わさった全体の姿が小さいながら(容量一合五勺)も実に堂々として写真では大きな物体に見えます。
更に土肌なのですが、これがもの凄く良いのです。
私は半時間ほど、これをひっくり返したまま底の土肌を眺めていました。「ヌケ」の土肌もやはり良いのです。
その上に降った胡麻も、質感、量共に適切で注ぎの切れも抜群です。
ここまで書いてきて、やはり隠しておこうかと迷い始めています。
なのでこの酒注ぎは皆様にお勧めはしません。
でも、お見せしましたよ。