「あえて描かない」という技法はやきものに限らず物語や写真など色んな場面で活用されることですが、その引いたり押したりの塩梅を一歩間違えると作者の自己満足を押し付けられているようでウンザリするものです。
山口さんの作品には、そういうバランスの悪いものを見せられたときの嫌気は全く感じられません。
全体を通して作品としてまとめるバランス感覚のようなものが優れているのかも知れません。
本作品にしても、下地の絵がとても動きのあるデザインに感じられます。これも一歩間違えば魅力を打ち消し合ってしまいそうなラインを上手くバランスを取っているのだと思います。
そしてよく見ると全体的に流れが右上に向かっているのです。
高台面も青海波を正面に向けるとオタマジャクシ型の掛け外しの尻尾が時計の短針の向きで13時30分ほどです。
ベタですが右肩上がりデザインを意識されているでしょうか、はたまた別のデザイン技法を・・・という風に観て考えて楽しいのが山口作品の魅力のひとつです。(大村)