先に本作品の弱みを挙げるとすれば、それは『作品名』かもしれません。
なぜなら本作品の強みが、胡坐(あぐら)を意識せずとも一つの酒器として、使用者が幸福を十二分に感じられる仕上がりになっている事だからです。
本来ならば長く使っていくうちにこの造形が語り出すストーリーを少しずつ自分で解釈していく、という楽しさが作品名の『ネタバレ』のせいでやや薄れる可能性はあります。
とは言え幸いなことに、本作品は胡坐を意識してしまってからが本番のようです。
白い胴部に見られる紅線のアクセントは美しく、直線的に見える造形には実は変化が加えられており、指なじみは抜群。それを堂々と受け止める胡坐の落ち着きは、対話する使用者の心に落ち着きをもたらします。
また、メタリックな高台は見た目の重厚さだけでなく、薬指と小指のこれ以上ない休憩場となり、結局のところは一つの酒器として優秀なのです。
胡坐をかく、という言葉は『努力をしない』という意味にも使われますが、いえいえ胡坐をかく余裕があるというのは至って素晴らしい事です。
本作品が示す胡坐は他人の胡坐か、はたまた貴方の胡坐を写したものか。
一つの酒器として優秀ながらも、そこで満足して胡坐をかかず、さらなる対話材料を備えた本作品。
末永く楽しめることは間違いなしです。 (日野)