本作品と対峙したとき、何よりも先んじてまずは『持ちたい』『使いたい』という極めて純粋で直接的かつ本能的な感情が湧いてくるのです。
程よく非対称性な造形に不安定さを察知した脳がそうさせるのか、白地に流れる自由極まりない釉に素早く反応した神経がそうさせるのか。
それを詳しく分離する必要などありませんが、いずれにしても本作品は言葉なき言葉で人の内たる気へのコンタクトを試みているようです。
いざ素直に欲求に従った場合には、これまた実に素直な快感を得られます。
脳が推測してしまった不安定さは、本作品が生み出した巧妙なフェイク。
実際に持ち上げた際の抜群のバランス。見込内をも奔放に流れる釉とそれを受け止める白地と黒地。歪んだ口の至妙な造形。
それらの総合体が、見る悦び、使う悦びという極めて純粋で直接的かつ本能的な感情を遺憾無く満たしてくれるのです。
さて、パートナーの一人は今ここに確定しましたね。
では続けてもう一人…
(日野)