松谷文生さんは尖鋭的かつ精緻な造形で欧米で大人気の作者さんです。
それらの造形物の新作を見せて頂くたびに、なぜかこれらが注器や酒盃に化けた具体的な姿を想像してしまうので、大抵はその場で“あらまし”を提案して製作を依頼するのです。
松谷さんは非常に「ノリ」の良い人ですので(私どもではこれをたいへん重視します)、けっこう無茶を振っても「何だかんだ」と言いながらも結局作ってくれるのです。ありがたいことです。
つい先日、このたびご紹介の片口と共にご来廊下さりましたが、何とも可愛らしい作品で、作者はもっと尖鋭的なイメージをもって作成したところ、このように「なってしまった」ということです。
この作者の内面には、堅固な風貌とは裏腹にこのような部分を本質の中に備えていると思っておりますことから、「なってしまって、それはたいへん良かった」と早速に皆様にご紹介の運びとなりました。
画像でもある程度お伝えできるかとは存じますが、弾力をもつ小生物を思わせる有機性を感じられる、楽しく可愛らしく、それでいて松谷文生ならではの造形力を存分に顕す片口です。
未だ作品名が命名されていなかったので、すかさず「ねじまき嘴青ちゃん」と提案しましたが即時却下され、結局、「継・蒼皓」という名となりました。「けい・そうこう」と読み、轆轤挽きのパーツを幾つか組み合わせた「継」に「蒼(あお)」「皓(しろ)」ということです。注ぐ際の「キレ」もたいへん良く、また意外かもしれませんが、古陶磁の酒盃と取り合わせても“おさまり”が良いのです。ぜひどうぞお試しを!