土岐津・高山にて制作を開始する
鈴木 都(すずき しゅう)氏は、やきもの屋さんとしては若手といえる年齢なのですが、そのやきもの愛好歴には年期が入っていて、小学生の頃以来なのだそうです。
これはとても重要なことで、現代はやきもの作者さんやそれを商う人達、そして研究者と呼ばれる者の多くが、やきものそのものにはほとんど興味が無い ! という驚愕の事実があるのですが、このことは案外知られていません。
このようなことは、将棋や相撲、野球、サッカー、マンガ、音楽など他の世界では、ごく一部の例外を除いては考えられない事態です。
特にその作者が、作るのは好きだがやきもの自体に興味が無い場合(恐るべきことに本人達がそれに気付いていないことが多い)、その行為はどこまで行っても陶芸教室の延長線上から出ることはありません。
カルチャーであっても文化ではないのです。(※注・このふたつはこの国の現代社会では別の言葉です。)
さて、「現代陶芸」というものが江戸中期以降の茶の湯、末法より後の仏教、80年代以降のロックミュージックのような有り様であるのは、こういった理由が主な要因かと思われます。話を戻しますが、鈴木 都氏はそういった意味でもたいへん期待できる作者だと思います。
実際、氏にお会いしてほどなく、「やきもの好き」を確認することができました。 今回は、その折拝見した作品群のなかから、私が個人的に特に良いと感じた「白い手の志野」を中心に買ってまいりましたのでご紹介いたします。
決して「マット」ではない、しっかりとした透明感のある石質の釉が、本来志野のあるべき姿かと思っていますが、氏の志野は加えてピンホールや釉の薄い部分に現れるほのかな赤味が堅固な質感に色気を添えています。手触りも良いですよ。
このたびの「やきもの通信」は、その「志野」に加えて、赤、紫、練り込みの志野各1点、黄瀬戸4点を合わせてのご紹介です。是非ご覧になってください。