胡宮 ゆきな・陳 韋竹 Komiya Yukina ・ Chen Wei-chu

胡宮ゆきなと陳韋竹の二人は女性陶芸家です。国籍は違いますが、二人は互いの国の文化に影響を受け、異なる国での生活体験を通じて独特な自身のセラミック作品制作にその経験を反映させていきました。二人は現在も母国の背景、異国での生活環境を背景にそれを作品のアイディアへとつなげています。

 

胡宮ゆきな、1987年沖縄県生まれ。2012年沖縄県立芸術大学大学院卒業。2014年から台湾に滞在し、制作活動を始める。父方の祖母が台湾人、祖父が中国人であり、幼少期から台湾と中華文化の影響を受け成長。その影響から台湾へと拠点を移し、現在は台湾の友人と共同でスタジオを持ち活動中。

 

胡宮は「目で感触を伝える」という事をテーマに作品を制作しています。
磁土を用いた作品を中心に、ドローイングや刺繍での作品を発表しています。
彼女は幼い頃、物がもつ様々な感触に興味があり、考えるより先にそれらに触れる事で指先にその感触を記憶させてました。また、現実には経験したことの無い感触も、頭の中の想像だけでそれをつくりだしています。その記憶の中の感触を視覚化させる事により、その感覚を再起させます。その行為を、鑑賞者が作品を触らずとも視覚性だけで、各人がもつ記憶の中の感触を呼び覚ますことを意識しています。何故なら、人には未だに忘れられない、過去に覚えた感触の記憶があると彼女は考えるからです。日常の中に新たな価値観を創造する力は誰しもが持っています。その感覚に目覚め、一緒にこの世界を更に楽しく共有することが、彼女の制作目標なのです。

 

彼女の作品はとても繊細です。ひとつの作品はひとつの物語を表現しており、作家の内面を理解しようとする時、ひとつひとつの物語を繋ぎ合わせると作家についてもっと深い理解を得る事が出来ます。各作品が宿す作家の思考と、異国での生活経験、それらをしなやかに描いた彼女の作品は、磁器の持つ魅力を纏い、美しく感じられるでしょう。

 

陳韋竹(チィンウェイチュウ)(Chen,Wei-chu)、1987年台湾桃園市生まれ。2015年国立台湾芸術大学大学院卒業。彼女の叔母が日本人と結婚している関係から、幼少期の夏休みを日本で過ごす機会があり、そこで日本の文化や生活様式に興味を持ちます。2015年夏から、滋賀県にある信楽陶芸の森レジデンスをきっかけに、現在愛媛県で生活しています。

 

陳は、動物や玩具が好きで、動物やおもちゃに陶芸を融合させた時に、最も創作意欲を掻き立てられます。
そんな彼女の作品からは、おもちゃのようなかわいらしさと、生き生きとした感情が作品からあふれ出てきます。陳の作品は、彼女自身の心の中に存在する空想の生き物ですが、それらはまるで実際に存在するかのように、観ている人へと語りかけます。
「幼いころに遊んだ記憶を思い出して欲しい」と彼女は話します。
作品は、主に陶土を使用しており、土の持つ自然な色合いや質感は、動物達の体毛や質感を想起させ、彼女自身も心地良く制作する事が出来ると言います。焼き締めた土は単純に美しく、そこに更にペインティングを施すことで作品をより生き物らしくします。
日本滞在中に制作されたもので「日本で彼女が感じたこと」が表現されています。日本の土で焼き上げられた陳の動物たち。日本で作家が感じたことを、作品を通して感じていただければと思います。

 

作品は、ユニークなシンボルである動物の毛髪と質感を描写しています。目と表情は感情を鮮明に表現しており、作家の魂を宿したそれらに、人々は作品の暖かさを感じることができます。毛質と目を細かく描写することにより、彼女の想像世界を理解するヒントとなり、観覧者に作家の無邪気さと活力を感じさせる作品です。

 

二人は、陶芸だけでなく、絵画や羊毛等多様な素材を扱い作品制作を行っております。より感動的な作品を制作する為により多くの経験をしたい等、二人の目標は同じです。 胡宮は、来年3月にギャラリーラボでの個展が予定されています。台湾で制作した新しい作品も公開する予定です。
繊細で大胆な作品が好きな方は是非ご高覧下さいませ

2017年10月4日