谷本 貴 Tanimoto Takashi
略歴
1978年
三重県伊賀市に谷本景の長男として生まれる
1997年
同志社大学文学部美術学及び芸術学専攻入学
2002年
京都府立陶工高等技術専門学校入学
2003年
森 正氏に師事
2004年
イタリア留学
2005年
帰国後 伊賀市にて作陶

やきものは、その作者と会って話すより作者本人のことがわかってしまうという、当人にとって甚だ不都合だとしても見る側からすれば実に面白いものでもあります。

といっても「桃が好きでも蟹と春の陽気は苦手・・」という類の情報ではなく、その者の喜怒哀楽と同じ層にあるような制御し難い何かとでも言えそうな「底」の部分が、どこを切っても出ているように思えるのです。

“窯で焼く”という最終工程を経るとき、当人の「予定」とはズレが生ずるわけですが、それゆえになお一層、意識の届いていなかった部分が形になって露顕するのかも知れません。しかもそれは千年後も余裕で残る証拠物件となります。

谷本貴さんは、とくに「尋常ではない言動」をしていなくとも、遠目に見ているだけで何かしみじみと独特のものを発散している人です。

そしてやはり例にもれず、それと全く同じ類のものがより明確にその作品から滲み出ています。

ですので、谷本作品を見て皆様が「きっとこういう人に違いない」とお感じになられたならば、即ち「そういう人」なのです。“やきものを焼く”ということにたいへん適格な方だと思います。

当廊ではこの4月末に、谷本さんの「水指だけ」30作品を集めた個展、「谷本貴 伊賀水指三十の貌」展を予定しておりますが、その前哨としてこの度のやきもの通信では「伊賀水指 酒器に化ける」展をお届けいたします。ご覧いただけますように、タイトル通りの酒器です。

これらの作品を一見して「ちょっと微笑まれ」た皆様! “見て使う”を繰り返すうちに他者ではまず成し得ない“谷本貴の世界”を感じ取っていただけることと固く信じております。

ギャラリーラボ