– ごあいさつ –
山田洋樹さんは「志野本来の釉肌」を実現させた、近現代では唯一の作者です。
志野は、その織部様式による独特の造形をもつ茶碗が目立つせいか、現代作者の多くが、その“茶碗の小型”のような酒盃を手掛けるようです。
ですが慶長期のオリジナル志野で、現在酒器の稀少な佳品として見立て使い(本来の用途は中附)されているものは、土見せの無い総釉の素直な筒や、その口辺に輪花が施されたもの、小型の四方といった姿形のものです。実際に酒を呑んだ場合、これらのものが“茶碗の小型”に比べ遥かに酒が美味いというのが私感です。そうはいえども志野の生命である釉肌がダメだと、それらはいかにもつまらない物体と化し、まだ茶碗の小型のほうが誤魔化しが利くだけマシ、ということになってしまいます。
そういったわけで、最適任者といえる山田さんに過日の個展の際にこの企画をお願いしていましたが、加えて鼠志野についても、「これぞ王道!」というものを焼く作者が案外に見当たらないことから、こちらもその折りに依頼していたものです。
更に今回は、その後の美濃の灰釉や飴釉に見られる「江戸中期型片口」(個人的に好きなので・・・)も志野で表現していただきました。
酒の美味い佳品が揃いました。どうぞこの機にお手に取って実感していただければ幸いです。
ギャラリーラボ 企画 進