(四年間修業)
「高麗茶碗への挑戦」出品
「古唐津に魅せられたもの達」出品
「残る条件をすべて統一したとしても、素材(特に胎土)が違えばまるで別のものになるやきもの」、といえば私は唐津をまず最初に思い起こします。
たとえば焼き締め陶のなかでも特にデリケートな反応性を持つ備前の土などの場合、その繊細な性質がゆえ、別種の土でも焼成によって「一見、似たようなあがり」に仕立てることは可能なのですが唐津はどう焼いたところで、その原土のもつ性質が前面にドン!と出てくるのです。
たとえば、全く同じ釉(濃度も)を岸岳の土に掛けると斑唐津、松浦系の土に掛けると無地唐津になったりするのです。(本当です)
冒頭の一文を逆に言い換えると、残す条件をすべて変えたとしても「土」によって同じやきものになるのが唐津です。(もちろんこれは「基本的極論」です)
それだけ土の性質がつよいのでしょう。
それが唐津のやきものの、見、触ともに強靭な質感となっていて、ここまでそれが直截的に現れるやきものは他にすぐには思い出せません。
丸田宗彦氏の唐津は、とても柔かな線で構成された造形、という外見を持ちます。
ところがその現物を間近で見、そして触った瞬間、驚くほど堅固なテクスチャーを確認できます。
実際、私は丸田氏の徳利を数本所持して、かなりの頻度で使っていますが、たとえ梅雨時に酒を残して眠ってしまったとしても、カビが生えるということがまるでありません。これは磁器を除く現代陶では貴重なことなのです。また丸田氏は、造形の柔かな雰囲気をやはり大切にしていて、そのために近年使用者が増えてきた未風化砂岩ではなく粘土を専らに使用しているそうです。
どちらかといえばシンプルな唐津陶の造形ですが、丸田氏の作品がここまで豊かなヴァリエーションを感じさせるのは氏の胎土の探索と研究の成果でしょう。
そして「丸田氏の唐津」のもうひとつの特色は、それらの原土を穴窯にて長時間焼成する、ということです。
一般的に唐津陶は古来より割竹式登窯での短時間焼成が主流でしたが、丸田氏は唐津では独特なこの方法により、一見しただけでそれとわかる、氏独自の質感を得ることを成功させています。
そしてもうひとつ、繊細さと強靭さとを兼ね備えた絵付けも、丸田作品の特筆すべき要素です。
氏は現在ではその絵付けの魅力を、美濃の織部様式を導入した一連の作品にも応用させています。
今回はそのような丸田宗彦氏の特色が発揮されたいろいろな酒器を、そして私(筆者)が、本当は自分用に欲しいと思える作品を選び、ご無沙汰しておりました「やきもの通信」として皆様にご紹介させていただくことが出来ました。
協力いただきました丸田宗彦氏には、心より御礼申し上げます。