「民芸陶器」とはどういうものですか、という質問を受けます。
民芸という名称に関しては、近代になってから柳宗悦という人が提唱した「民衆的工芸」の略称ですが、その後の有象無象が、寄ってたかって話をややこしくしているだけのことで、実態はいたって簡明です。
要は「在地窯」である、ということです。
在地窯とは、地元で賄うことを目的として生産されたやきものを焼いた窯のことで、広域流通を前提としない窯のことです。
なのでここでいう「民芸陶器」とは、やきものを日常に使用することが一般化し始めた江戸後期から、生産が機械化されるようになった近代までに、在地窯で焼かれたものを指します。
したがって現代に個展や陶器店などで「全国展開する民芸」というのは、それ自体おかしなことなのですが、デパートの催事場の「北海道物産展」などではけっこうな動員数があるそうですので、これもそういう場での行商の売り文句として有効、とのことなのでしょう。
ただこの場合、名称を「観光陶器」にする方がわかりやすいと思います。
「身内」だけに流通するものや「会員制」のものには「陶芸教室」などがありますが、これはやきものそのものが産業になっているものではありません。
というわけで、現代製の民芸陶器というものは未だ寡聞にして知りません。