皆様がこれを読んで「ギャラリーラボでは何ひとつ買うか!」とお怒りになるのは筋違いである。ここはとにかく「ギャラリーボラ」なのだ。
今回は、Meshuggah / Destroy Erase Improve
私はヘタウマが大嫌いである。「ウマウマ」でなければ「ヘタヘタ」の方がまだマシだ。いや、言い直せば「ヘタウマ」を売りにする者と「ヘタウマ」だから好き、という者がダメなだけであって、意図せずそこに該当している者に問題はない。対人の場合にも言えるが、一見隙のなさそうな者に何か欠点を見つけて、そこに親しみや共感を抱くという卑屈者のヒガミ根性が嫌いであるにすぎない。
因みに「侘び」や「破格」といったものがあるがこれらは「欠点」とは無縁のものであって、完璧なものに絶妙の按配で引き算を加える高度な技術と境地と覚悟の産物である。
前置きが長くなってしまったが、メシュガーはスウェーデン出身のデスメタルバンドである。
デスメタルとはヴォーカルがデス声(ガ行かダ行とゴリラ声のみで終始絶叫している、とても可愛らしいヴォーカルスタイル)の背景で、複雑なポリリズムやブレイクが破壊的な音像で繰り広げられるへヴィメタルの展開形である。結論からいえば、ヘタクソが演ればただの騒音にしかならない。他の音楽にも増して、特に高度な演奏技術が必須である(ヴォーカル以外は)。
メシュガーのこの1995年の傑作は、例にもれず超絶技巧に加え近代音楽以降の12音階的要素やメロディーの美しさ、楽曲の構成力など多くの上質な音楽の条件が破壊力のある音の壁の中に込められている。
世の中には、「クラシック以外は聴かない」、「ブルース以外は音楽じゃない」といった者達がけっこう居て、彼らはへヴィ―メタルを「単にうるさいだけ」とひと括りに毛嫌いすることが常である。本来、特定の何かを正確にとらえている者は、馴染みのないものに接してもその品質の判別が適切にできるものである。なので、例えば前記の者達が果たしてクラシックやブルースを「聴いて」いるのか否かを確認するための試金石としても、このアルバムは使える(時間のムダであると思われる)。
これを会社の面接試験に使ってみてはどうだろう。
問「ところで、あなたはヘヴィメタは好きですか」
答「・・・いえ、たいへん苦手です」
問「ではこれを聞いて下さい」
―――大音量でメシュガー5分間―――
問「いかがでしたか?」
答「・・・・・・(泣)・・・」 やや間
「これまでの人生がいかに偏狭であったかに気付かされました。有難うございます。入社希望は取り下げ、明日からはこの音楽のような世界観を創造し、表現を通じて人々に提案できる仕事を目指すことにしました。」
と、このように優秀な人材はなかなか容易には獲得できないということも確認できる。
是非大音量でこれを聴いてみて下さい。クラシックよりは騒がしくないと思います。