酒と酒器の関係については、地球上における酸素と生物との関係と同じようなものだと思っています。
酒器を愛する人のほとんどは、アル中でもない限り酒器が悪いと酒を呑む気がずいぶん失せるものです。
そして私の知る限りにおいて、そういう方は酒そのもの(アルコールが人体にもたらす作用以外の、という意味です)にも、それなりの興味あるいは知識を持っているのが常です。
さて、今回述べようとしている結論を先に述べます。
「酒を提供する側のほとんどは、なぜこれほどまで酒器に無関心であるのか?」
関心の基準として、「酒器愛好者が酒に興味をもつ一万分の一」でも(少な目の見積もりです)酒に関わる者(醸造者や酒販店、もしくはそれを提供する呑み屋さんや料理屋さん)などが酒器に興味をもってくれないのかと本当にいつも、何処に行ってもそう思うのです。私が思っているだけではなく、どうやら全国的にそういう「現実」のようです。
食器に造詣を持つ料理屋さんも意外なほど少ないのですが、そのなかで食器は良いものを使っていても酒器が良くない店が、また多いのです。
酒を提供する側の者が、ここまで極端に酒器にまるで興味をもたないのは如何なる理由なのか・・・?
酒造元、酒屋、料理屋はほぼ同じ「団体」に属し、「酒器には決して興味をもってはならない」という厳格な戒律でもあるのか!?としか思えない現状です。
もちろん口では皆さん「たいへん興味があるし、その関係を何とかしてゆかなくてはならない!」と一様にいうのですが、大概は3分も話せば確実にその正体が出ます。
「本当に無知な者とは、自ら知らないということを知らない者のことである」という古人の言葉を思い起こさせます。
近年のやきものの品質は、全体としては衰退の傾向に歯止めがかからず、それに対し酒はこの国古来のものの「最後の砦」と呼べる品質を近年実現させているので、その実績においてやきものを卑下しているのかと思いきや、単に全く興味が無いだけであるということのようです。例外に出会うことはまず滅多にないことは先述のとおりです。
実際に酒器に興味を持つそれらの関係者達は、果たして全国に何人いるのでしょうか?
「ニホンカワウソより多く、ニホンカモシカより少ない」といったところであると思われます。
やはりこれではいけません。絶滅する前に何とかしなくてはなりません。