7. 常滑鳶口小壺 15世紀 高さ9.7cm胴径10.8cm
前回に引き続き常滑です。同じく南北朝時代のものですが、こちらは鳶口小壺です。もちろん私には酒注ぎ以外の何ものにも見えませんが、出自はおそらく別のものでしょう。
いわゆる口縁に片口状の注ぎ口をもつ小壺で、一般的には「片口小壺」と呼んでおけば無難でしょうが、ひと昔前のやきもの好きは産地によって、たとえばそれが備前ならば「すずめ口」、常滑や瀬戸であれば「鳶口」などと呼び分けていました。理由は、それぞれの地元でそう呼ばれていたから、ということ以外に特には無いようです。「すずめ」のほうが「鳶」より嘴が長く大きかったりします。
このサイズの片口小壺は中世から近世にかけての各地古窯に存在はしますが、なぜか越前以外のものには陶片も含め現存数がとても少ないのです。常滑も例にもれず、なかなか「売り物」にはお目にかかれません。ものはとても可愛いのですが、値段は全然かわいくありません。
ですが、先人の「買ってしまえば値段など何の関係もない」との金言は、人類がこれまで残した言葉のなかでもとりわけ絶対的真実であることに、まったく疑問の余地はありません。
「買う」という行為は、「自ら死ぬ」ということとある種同列の行為です。
間違っても、買った後に化けて出るような行為は、「人類の恥」ですので是非やめましょう。