やきものが嗜好品である現代では、見たり使ったりする立場からすれば、それは「趣味の領域」ということになります。
ですから「やきものの見かた」ということについての定義やルールなどはありません。
以前(No.14)の稿で、「間違った観かたとは」について述べましたが、ここでいう「間違い」とは、「明らかに情報量が大幅に削減されてしまうので残念!」ということに過ぎず、間違っているからといって先生に叱られたり、警察に連れて行かれたり、猫に顔を引っ掻かれたりはしません。
それは「好き嫌いと良し悪しを混同しない」ことと、「知らない、ということを如何に知っているか」ということによって、やきものからより多くの情報を受け取ることが出来てぜったい楽しいですよ♡という話でした。
そこで今回は、「こうすれば、より楽しめるかもしれません」という具体化した方法を一例紹介してみます。個人的な経験則でおこがましいのですが、それでは早速・・・・。
先ほど、「好き嫌い」という言葉を使いましたが、「嫌い」には「苦手」という要因が含まれることも多いと思います。
1.そこでまずは自分がこれまで、一見してもとりわけ興味を感じなかった類のやきものは何か?について考えてみます。
2.次に、その理由とそこに「嫌い」「苦手」といった要素の有無を調べてみます。ここで必要な作業としては、「何となく・・」を極力排除し、何でもよいのでひとつでも多くの具体例や仮定を並べてみることです。
3.さらに、なぜそれらの要素を嫌いで苦手と感ずるのか?について省察します。
ここまでの行程をひとしきり終えれば、(たぶん)それらのことがやきもの以外の事案にも同様に及んでいることの発見となることと思いますが、これはやきものの話ですのでそちらは割愛します。
ただしこの行程での最後の部分には注意事項があり、場合によっては精神状態に影響を及ぼし神仏の心境に達したりすると、実際に病院に連れて行かれたり猿に食べ物を奪われたりして後々面倒ですので、決して無理をしてはいけません。冒頭で述べましたようにこれはあくまで「趣味のこと」で、よりやきものを楽しむためのひとつの方法なのです。
さてここまで来れば、あとは簡単な行程をひとつ実行するのみです。
4.今後さまざまな場面でさまざまなやきものに接する度に、その「嫌い」「苦手」と感ずる部分を“重箱の隅をつつく”ように探しこの行程を繰り返す、ということです(「対人」の場合ではやめておいたほうが無難かと思います)。
「なぜ?」という部分を敢えて中略してすみませんが、その結果として、やきものから受け取る情報量がかなり控え目に言っても“格段に”増えます。
「好き」や「得意」なことならば、そのような面倒を経なくとも容易に判別できるようにも思えますが、上記の手法を習慣として行っていればいつの間にか、その領域でもより明瞭な輪郭を得ることができると思います。
先述のようにやきものが趣味の世界であるならば、このことによってやきものを骨董、現代的、焼締か施釉か、窯の種類や焼成日数、使い勝手、作者との面識の有無などといった属性による二次情報ではない「やきものそのもの」を楽しめる機会を大幅に増やす(一般的にはこの状態を「鑑賞力の向上」というようです)ための、手っ取り早く実効力のある良い方法だと思いますので、ぜひいちど試してみて下さい。