36. 池西剛展展覧会レポート

いつもはとても静閑な店内が、初日から「いったい何事?」と道行く人が覗き込む異様な賑わいで、私たちにとってまるでシュール!!な光景で始まった池西剛展ですが、2日目以降も来店者は途絶えることはなく定休日も対応するという、新店舗になって初めての体験をさせていただきました。

今回の盛況は、池西氏の全面的な協力を得ることが出来たこともありますが、やはり開催が決まってからの氏とのしばしば深夜におよぶディスカッション数は半端なものではなく、思いつく「準備」の多くを実行できたからではないかとの自負もあります。

いつも思うのですが、個展開催は、その作者の作品を素材としたギャラリー側の作品提示ですので、日付を決めてDMを作ってはいどうぞ、ということはあってはならないことですが、それには作者さんとの、それこそ石垣を積み上げてゆくような作業と信頼関係が必要です。

しかし双方かどちらか一方にその意識が薄いと、なかなかうまくいかないものです。

本展は、皆様がそんな私共の思いを汲み取っていただいた成果であると、ほんとうに心の底より御礼申し上げます。

今回池西さんは、「ぐいのみ手を“やってしまった”のだが、自分としては良いと思うけれども一般受けはしないだろう。それでも私は当分これを続けるつもりなので、皆から見放されたあかつきには晴れて念願の隠遁生活に入るのだ」と本当にうれしそうに語っておられたのですが、残念ながら実現できそうにはありません。ぐいのみ手に、注文が文字通り「殺到」してしまったからです。

この作品を手にしたお客様達の喜びようには私たちも驚き、池西さんは唖然として「こんなに喜んでもらったのは初めてかも知れない」とおっしゃっていました。

池西さんの作品群の中でも特に王道感に満ちた、「やきものは良いなあ」と肌で感ずる仕上がりでした。

今後は予告通り、このシリーズを展開してゆかれるそうなので楽しみですが、「夢の隠遁生活」は氏にとって遠のいてしまったようです。