高温長時間症候群という病気があります。熱中症の仲間ではありません。
「何度で焼いたか」と聞く人がいます。質問の良し悪しはさておき、問題は答える側に、1200℃なら1300℃、5日間なら7日間と、より長く申告しようとする傾向があるということです。なぜでしょうか。温度が高く時間は長い方が良いものが焼けると本気で考えているのでしようか。そうでなければ、買う側を馬鹿にしているかと思われます。
うどんや蕎麦にもそれぞれに適した茹で時間があり、天麩羅を揚げるにも適温があります。長過ぎても高過ぎてもいけません。やきものも、高温だから「よく焼けている」わけではないのです。
前述の場合、たいがいこう続きます。「このやきものは焼きが良い。なぜならば高温でじっくり時間をかけて焼いているからだ。ゆえにそのぶん高価なのである。」
買う側の皆様は、こんな出来そこないの三段論法で温度や時間の「延長・超過料金」を不当に搾取されぬよう、また、余剰光熱費や残業手当の肩代わりをさせられないようにご注意ください。
予防策としては、病人特有の言動を察知することが有効ですが、そういった、やきものをみるうえであまり重要でないことに執着せぬことが更に良策です。
温度や時間といった断片を知っても、かえってその全体像は不確かなものとなります。
もっと恐ろしいことには、そんなことに首を突っ込んでいると、知らぬ間に「やきものや」になってしまいます。
こうなると、残念ながら手の施しようがありませんので、諦めてください。