9. 丹波片口小壺 15世紀 高さ11.8cm胴径cm11.9
今回は丹波ですよ。これが備前の場合だと「すずめ口」の典型的な形なのですが、丹波のものは備前以上に類例が少なく、あるいは互いに混同されている可能性もあるのですが、この形のものが出ると、大概「備前」と片付けられているようです。
今回掲出のものを「丹波」と断定できるのは、その土肌と、底部に灰を塗布する室町中期の丹波特有の手法によります。ちなみに備前の場合、成形の段階で轆轤盤上に撒き敷いた灰が底面に残り、それが焼成時に融けて灰釉のように見えることがあり、丹波とは釉と土との凹凸が逆になります。尤も、備前のすずめ口の場合は糸切り底であることが多いのですが。
さらにはこの片口壺は腰の部分にヘラ描き線刻による窯印が刻まれていますが、備前すずめ口では、なぜか注口下の真正面に大きく刻まれていることが多いのです(8.参照)。
今回これを「片口小壺」とつまらなく表記したのは、前記のように丹波でこの形のものの現存が備前や常滑に比べても稀なので、その地特有の呼び名が伝わっていないことによる理由です。
片口小壺では通常、備前のものが他より「くちばしが長い」のですが、この丹波はそれと同等かそれ以上に立派な嘴をしています。
前回の備前はいかにも「すずめ」らしかったのですが、この丹波は、しばらく眺めていると「ペリカン」にみえてきます。
面倒なことも袷呑んでくれそうで、頼もしいかぎりです。