池西剛展覧会でおもしろいな~と感じた出来事を一席。
以前からギャラリーに来て下さっている村長さん(仮名)は風のように姿を現しすう~と帰っていきます。
今展も足早にみて徳利や黄瀬戸盃を手にとり「値段が高いね~買う人おいでるの」と話しかけられているのか一人言なのか、声の調子があまりにも一定で、10分も過ぎた頃いきなり「これください」と黒高麗皿をとり一点買われ風のように帰り去ります。
また翌々日にすう~と来られ黒高麗皿を一点「これください」と、帰り際にまた突然「これもください」と、その選び方はあっと驚く程のスピードと脈絡のなさです。
何日かして風のように現われ3分後に黒杯を手に取り「これください」と―。こちらの方がドキドキ戸惑ってしまいます。
風貌から醸し出される存在感はグンを抜いて眼鏡ごしにみえる目の形はいつも同じです。
また翌日も風のように現われました。すると黒高麗盃を手に取り、その時在廊していた池西さんに、どうしてこの盃はこうなったのかとの質問に対して、池西さんが少し説明すると、即座に「これください」と言ってその盃を持参のポリ袋に入れ替え帰り去りました。
その盃はいつも手に取り気になっていた盃で、実はもうひとつ気になる盃があることを私は知っています。
結局村長さんは都合7回来店して、合計5点買ってゆきました。
最高に盛り上がるのはこの後です。
会期が終わる2日前、池西さんが宇高さん(Gラボ現顧問)に教えてもらった村長さんの〇〇〇店に「仕返しに」行ったことからこの話のおもしろ過ぎる結末に繋がります。
店内でのユニークな話は略しますが―。
池西さんはその時に、村長さんから茶封筒を差し出され、これをギャラリーにいる女性(大切)に渡してくれと頼まれたとの事で、渡された封筒の名前は〇〇〇〇?何か変ですね―池西さんの表情もものすごく変です。吹き出しそうです。
村長さんは「村長さん」ではなかったのです。
「以前、記帳をもとめられたので隣のおじさんの名前をとりあえず書いておいた」とのこと。
村長さんの本当の名前は、封筒に書かれている〇〇〇〇様でした。今までの「村長さん」は隣のおじさんだったのです。
ええ~!!ビックリ仰天、驚き桃の木山椒の木です。心の平穏を失いつつ表情はほころびます。茶封筒を受けとり説明を聞いた時の池西さんはどんな顔をしていたのでしょうか。想像をするだけで吹きだしそうです。この話は宇高さんも長年「村長さん」だと信じて疑っていなかったので、ビックリでええ~「何じゃそりゃあ」の連発で、ああ~この話を肴に酒がすすみます。
この会期中、酒器の会で出合った方々や〇〇〇〇様との出合いはとても心地好い(笑)で、今治ラボの25年間が締め括られました。
展覧会後もまだまだ続く池西さんの黄瀬戸、そして青瓷、黒、白、備前、信楽他のやきものに私の目、眼はついていけるのでしょうか。目が点になるまでみる事を続けることはできます。まさにもぐら叩きゲームのようで楽しくもありますが疲れます。
今治で出合った隣の人の名前だった村長さんは本当の〇〇〇〇で毎回DMを送って下さいと申し受けました。とても嬉しくこの会期が締め括られました。
ありがとうございました。
(小野銘子)