やきものギャラリーにも時折、小さなお子様連れのお客様がいらっしゃります。
たいへんよいことです。
ところがひとつ、非常によくないことがあります。
さて何でしょうか?
ガキ・・失礼いたしました、お子様が騒ぎ、走り、踊り狂う?
否、違います。やきものに、一人の人間をそのようなトランス状態にする力があるのならば喜ぶべきことです。
ドメスティックバイオレンスが繰り広げられる?
否、違います。そのようなものが展開されるのは「夫婦連れ」の場合です。
お子様が、やきものをねだって床に座り込んで泣きわめく?
否、違います。そのようなお子様がいらっしゃれば即座にスカウトします。
お子様がやきものを叩き壊す?
否、違います。少なからずそのようなお子様の気持ちがよくわかります。
では、その「大罪に値し七代先まで畜生道に堕ち果てる極めてよくない行為」とは何でしょうか?
答えは、皆様も時折見かけるであろう光景のなかにあります。
それは、親(母親である割合の方が多い)がお子様に「触ってはいけません!」と注意することです。
ガキども・・失礼、お子様方こそやきものを触っておく必要があるのです。
まがりなりにも、ギャラリーでも覗いてみようかとの「やきものに興味がある人間」に「お子様」がいるのであれば、物を持つという機能が備わり始める三歳あたりから「やきものの正しい触りかた」つまり取り扱いの所作くらいのことは当然に教え始めておかなくてはなりません。
こういった所作は、各種技芸を学び始めるにも適した年齢より教え始めると確実に身に付くものです。
幼少期の者にやきものの取り扱い(「商売」ではなく「取って扱う所作」のことです)を教えると、実際驚くほど速く正確に覚え、身に付いたものなので「はたち過ぎても」忘れません。
取り扱い所作が身に付いていると普段何気にちょっと触っても所作が綺麗のみならず、また滅多にいろいろな物を破損させないという経済的副産物も付きます。
ですがベテランコレクターと呼ばれる人達の中にも、実に危なっかしい触り方をする人が少なくありません。彼らが所作を身に付けていると、少なくともテーブルの上でやきものを片手でガリガリと回し見た挙句、「畳付きの手入れが甘いからテーブルが傷つくではないか!」などというようなことにはなりません。
やきものに限った話ではありませんが、親が普段やっていないことを子に教育はできません。
やきものギャラリーで子供に「触ってはいけません!」という親は、公衆の面前で七代先まで遡って自らの家系の恥を晒しているも同然です。そういう親たちに触られるやきものは本当に気の毒なものです。
「触るな!」と言うより前に、「触りかた」を教えておけばよいだけのことなのです。
やきものに関わってきたなかでこれまで二度、正しくやきものを取り扱う就学以前とみられる小さなひとを見たことがあります。それだけです。