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57. 粉モン粉引

 

粉引については、「白磁を規範に白いやきものを目指したもの」というのが定説となってすでに久しいようです。

ではまずは、やきものの歴史の中で“原点”を多く擁する中国唐時代のものを見てみましょう。

三彩、緑釉、藍彩、褐釉そして黒釉のものにも、その多くの素地には白化粧が施されています。これは素地の干渉による呈色を避け、各色釉の発色の鮮明度を高めるのが目的の技法です。

遼時代にもそれは引き継がれ、北宋になれば白化粧された素地に乳濁釉が施されたいわゆる磁州窯の、その出土遺跡名より「鋸鹿手」と呼ばれ、その昔中国陶磁愛好家に珍重されたやきものとなります。
その技法がその後15世紀頃に朝鮮半島や東南アジアに伝わり「ご当地アレンジ」されたものが、前者は「粉引」、後者が「スンコロク」や「スコタイ」と呼ばれる絵刷毛目陶です。

これらはいずれも「白いやきもの」ですが、白化粧の上に施釉されるのは、磁州窯では先述のように「乳濁釉」、粉引では「紛青釉(劣化青磁釉)」ですので、これらは通説に言われる「白化粧上に透明釉」ではありません。また、白磁に憧憬してのことであれば、「唐白磁」というものもあったこの時代に焼けば色の出る土に白化粧掛けをした上に、わざわざ緑、藍、茶、黒やその混合などの釉を掛けないでしょう。この時代にも乳濁釉はありましたが「白に白」は割に少ないものです。

 

さてここで李朝時代の「粉引」ですが、これが「白磁を目指したもの」でないとすればでは何を目指したものなのでしょうか?

このような話の際には往々にしてありがちなことですが、「~を目指す」ということを無理にでっち上げようとするからこのようなことになるわけです。別に何でもかんでも「何かを目指したもの」である必要はありません。私たちがこの世に生まれ堕ちたのも、自分自身が何かを目指したからではありません。

この「粉引」にしても、その技法は既に存在し、実技研修などしなくても陶工が一見すればすぐに出来る技法なので、単に現在の全羅南道雲岱里周辺その辺りの原料+アルファで「白っぽいやきもの」を作ろうとしただけだと思われます。

ではなぜ「白」なのか?といえば、理由は簡単で「その方が一般受けするから」であり、実際に現代に於きましても、店頭で白化粧を施したものと白化粧無しでそのまま施釉施したものとのどちらが「売れる」かについては、100:1の割合であればまだ「変人含有率」の異様に高い店といえるかも知れません。

そのような傾向は数百年を経た現代でも変わることがありません。欧米人による有色人種に対する差別が無くならないのも「美白」が喜ばれるのも「白へび」が神様なのも、そのような実に単純極まりのない人間の深淵にある動物的反応によるものと考えられます。

 

今回冒頭の「やきものの常識の誤り」を修正するとすれば、「白っぽいやきものにしてみました♡」でよいと思います。