しんぐう さやか
眠かろうが疲れようが植え込む一本一本の毛は丁寧に、そして丁寧に。またある時は丁寧に仕上げきったところでうっかり指が当たったりして数秒前まで総立ちだった幾千本の毛は一瞬で崩れ去り、諸行無常が響くけどまた1本目から丁寧に。
完成までただただ時間を要する作品です。もう二度と嫌だと思うのですが出来上がった時の達成感と幾千本の蠢きを見たとき、次はもっとこうしたい…と考えてしまう私はここ十数年間、苦行を繰り返しています。
1979年大阪生まれ。
カラフルな絵本を作りたいという可愛らしい幼女時代の夢はいつの間にか彼方へ消え、大阪芸術大学陶芸コースを卒業後、滋賀県陶芸の森を経て京都で黒々とした作品を作り続けて来ました。写真は京都時代の棲家、うづら荘の玄関に鎮座されていた大黒さんです。どうぞよろしくお願いします。
新宮さやかさんの作品を初めてみたのは、偶然手にした雑誌に掲載されていた個展情報の写真であった。その、花とも水棲生物ともつかぬ材質不明のオブジェのようなものを目にし、「最近の作家さんはたいしたものだなあ」と通常ならばこれで終わる。ところが、どうしたことか、しばらくその写真から目を放せず、その雑誌を閉じてから気になってまたその頁を開いてみる。それを何度か繰り返すうちに「これはひょっとすると凄いのではなかろうか」との結論に達し、(午前2時であったので)翌日その画廊へ問い合わせて結局、他の作品数点とともにそれを購入した。
新宮さんの作品は、そのあきれ返るよりほかにない超絶な手数」にまず目が行くが、その真価はそれと「おさまりと品性の良さ」との共生である。このことは存外、類例の少ないものなので貴重である。実際にお会いした新宮さんは、実におおらかさを感じさせる人であった。 (企)