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金重 充宏 展
金重 充宏 展 令和8年2月7日(土)~2月15日(日)

近現代のこの国では「やきものを焼く」という発想には、大まかには次の二通りがあるようです。
窯と炎。
熱処理。
前者の一見、古代より連綿と続く伝統のような響きに対し、後者は産業革命以降の機械文明を感じさせるかもしれません。ですが、前者のように「土と炎や窯」といったものが殊更強調されるのは昭和以降の「陶芸」ブーム以降の発想で、古代より近世までの陶工は後者でありまず例外を見ません。目的に対し時間、燃料ともに無駄なく最小限に押さえる努力や工夫がその遺物や遺構から見て取ることができます。「科学」は決して近代の産物ではなく、古人は紛れもなく天然の科学力を備えていたのでしょう。
土や窯などは素材や道具として当然その行程に含まれ、炎は固形燃料を燃やす際の副産物に過ぎず、炎でやきものを焼くのではありません。炎だ土だ、などと雰囲気や戯言に流されていれば、昭和以降の現代陶芸の多くのように「ひと窯で良いものは数点」などという趣味の延長同様、素材の無駄使いを平然と繰り返すことになります。薪窯を実践として正しく機能させている作者は滅多に見かけませんし、「それらしきもの」を焼くのであれば、ガスや電気の窯よりも薪窯のほうが実際に遥かに簡単で楽でもある、ということも一般には案外知られていません。こういった「土、炎、窯」などという、道具や工程の一部を本尊とする魑魅魍魎な信仰がいまだ罷り通るのが、近現代陶芸の不幸な実態だと思っています。
前置きが長くなってしまいましたが、金重充宏さんは『伝統産業』といわれる備前焼の窯元に生を受けた現代の作者さんです。備前の素材は、熱処理で多様な仕様を求めるのに、国内でも殊更適した素材です。金重充宏さんの仕事は、完成予定のものから逆算して熱処理を組み合わせる方法、つまり焼成を「熱処理」と把握し備前のやきものを焼く手法です。窯の熱源も目的に応じて使い分けています。やきもの焼成の正確な実践を志向する作者であるということです。
そういった作陶姿勢は結果に反映されており、今後の作品展開に期待をもって注目できるものだと思っています。知る限りにおいて、良いやきものを焼く作者は漏れなく冒頭後者の発想の持ち主です。
というわけですので、先ずは現在の『金重充宏の備前』を、ぜひどうぞご高覧下さい。

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